ONSEN SOMMELIER NOTE

成分表で読む、自分に効く温泉。

温泉巡りをもっと楽しくするための、知識の整理ノートです。
温泉ソムリエ認定講座テキストの内容を、「成分表を見て、自分の体に合うかを判断できる」ことをゴールに再構成しました。

温泉の種類

10+2

主要泉質

分類の軸

4

泉質・温度・pH・浸透圧

分析書チェック項目

28

読み解きポイント

読み方のコツ:1〜2章で「言葉」を覚え、3〜4章で「自分の好みの泉質」を見つけて、6〜7章で「分析書を読む実戦」に進むのがオススメです。

CHAPTER 1

温泉とは

日本では「温泉」と「療養泉」は別の概念です。温泉法(昭和23年)で「温泉」が、その下位概念として「療養泉」が定義されています。療養泉の条件を満たして初めて「適応症」(=効能)を名乗ることができます。

広義

温泉(温泉法)

次のどちらかを満たせば「温泉」を名乗れる。

  • 泉温が25℃以上であること
  • または、19の特定成分のうち1つ以上が規定値を満たすこと

つまり「冷たくても温泉」「ほぼ真水でも温泉」がありえる。法律上の最低ラインが緩い。

狭義

療養泉

効能(適応症)を掲示できるレベルの温泉。条件は厳しい。

  • 泉温が25℃以上
  • または、療養泉用の7つの特定成分のうち1つが規定値以上

分析書に「○○泉」と泉質名がついていたら、療養泉=効能を名乗れる温泉。

成分の基準値(早見表)

試料1kg中(mg/kg)の含有量がこれを超えると「温泉」または「療養泉」の条件を満たします。

成分 温泉 療養泉
溶存物質(ガス性のものを除く)総量 1,000 mg/kg 以上1,000 mg/kg 以上
遊離二酸化炭素 (CO₂)250 mg/kg 以上1,000 mg/kg 以上
水素イオン (H⁺)1 mg/kg 以上1 mg/kg 以上
総鉄イオン (Fe²⁺+Fe³⁺)10 mg/kg 以上20 mg/kg 以上
よう化物イオン (I⁻)10 mg/kg 以上10 mg/kg 以上
総硫黄 (HS⁻+S₂O₃²⁻+H₂S)1 mg/kg 以上2 mg/kg 以上
ラドン (Rn)20 × 10⁻¹⁰ Ci/kg 以上
(=74 Bq/kg)
30 × 10⁻¹⁰ Ci/kg 以上
(=111 Bq, 8.25マッヘ)
リチウム/鉄/マンガン/フッ素/メタケイ酸 ほか各規定値あり(19成分)

※ 平成26年改正以降、「含アルミニウム泉」「含銅泉」は廃止され、療養泉は10種類に整理された。

CHAPTER 2

4つの分類軸

どんな温泉にも、必ず4つのタグがつきます。泉質・泉温・液性(pH)・浸透圧。これを覚えれば、分析書の冒頭1行で温泉の正体が9割わかります。

AXIS 1 — 化学組成

泉質

何が溶けているかで決まる。10種類の正式名称。

単純温泉 塩化物泉 炭酸水素塩泉 硫酸塩泉 二酸化炭素泉 含鉄泉 硫黄泉 酸性泉 放射能泉 含よう素泉

AXIS 2 — 温度

泉温

源泉そのものの温度(湯船の温度ではない)。

  • 高温泉42℃ 以上
  • 温泉34〜42℃
  • 低温泉25〜34℃
  • 冷鉱泉25℃ 未満

AXIS 3 — pH

液性(水素イオン濃度)

肌触りを決める軸。pH 7.5 以上でツルツル=美肌効果。

  • アルカリ性pH 8.5 以上
  • 弱アルカリ性pH 7.5〜8.5
  • 中性pH 6〜7.5
  • 弱酸性pH 3〜6
  • 酸性pH 3 未満

参考:胃液 pH 1〜2 / 中性洗剤 pH 7 / セメント pH 13

AXIS 4 — 濃さ

浸透圧

どれだけ濃いか。濃い湯ほど成分が肌に染み込みやすいが、湯あたりもしやすい。

  • 高張性(濃い)10 g/kg 以上
  • 等張性8〜10 g/kg
  • 低張性(薄い)8 g/kg 未満

高張性は短時間で十分。長湯禁物。

分析書の冒頭1行を読む例
泉質:ナトリウム-塩化物泉低張性中性高温泉

→ ① 泉質: ナトリウム塩がメインの「塩化物泉」 → 保温力◎、「熱の湯」
→ ② 浸透圧: 低張性 → 体液より薄め、長湯OK
→ ③ 液性: 中性 → 肌に優しい
→ ④ 泉温: 高温泉 → 加水加温なしでそのまま入れる
→ 一行で 「優しめだけど保温力ある、メインで温まる湯」 と読める。

CHAPTER 3

10種の泉質図鑑

平成26年改正後の正式な泉質は10種類。それぞれに「キャラクター」があります。「自分はこの泉質が好き」が見つかると温泉巡りが一気に深くなります。

単純温泉

タイプ1 =刺激が少ない・優しい湯/別名「神経の湯」「脳卒中の湯」

溶存物質が 1,000 mg/kg 未満 で泉温25℃以上。成分が薄いから刺激が弱く、家族・高齢者・病後の人にも安心。pH 8.5以上だと「アルカリ性単純温泉」となり、肌がつるつるになる「美人の湯」。

浴用適応症

自律神経不安定症、不眠症、うつ状態

飲用適応症

なし(一般禁忌のみ)

代表温泉地

下呂・道後・鬼怒川・修善寺・湯田中・由布院・水上 ほか

塩化物泉

タイプ2 =海の塩の湯/別名「熱の湯」「子宝の湯」「傷の湯」

塩化物イオンが主成分。塩のコーティング効果で保温力が抜群、湯冷めしにくい。塩分が傷に染みるが殺菌・保湿効果あり。三大美人泉質の1つ(保湿系)。飲用は胃を温め慢性消化器病に。高血圧・腎臓病の人は飲用NG

浴用適応症

きりきず、末梢循環障害、冷え性、皮膚乾燥症、うつ状態

飲用適応症

慢性消化器病、便秘、萎縮性胃炎

代表温泉地

熱海・城崎・指宿・有馬・片山津・皆生・三朝・登別 ほか

炭酸水素塩泉

タイプ3 =ヌルヌル系/別名「美肌の湯」「清涼の湯」「冷の湯」

重曹分が皮膚の油分を分解 →クレンジング効果でツルツルに。三大美人泉質の1つ(クレンジング系)。湯上がりは肌の水分が蒸発しやすいので保湿剤を併用。飲用で胃酸を中和、糖尿病・痛風にも。マグネシウム型は便秘にも有効。

浴用適応症

きりきず、末梢循環障害、冷え性、皮膚乾燥症

飲用適応症

胃十二指腸潰瘍、逆流性食道炎、糖尿病、痛風(飲用)

代表温泉地

嬉野・小谷・川根・東鳴子・湯の川 ほか

硫酸塩泉

タイプ4 =塩のもう1つの顔/別名「傷の湯」「中風の湯」「脳卒中の湯」

硫酸イオンが血管を拡張、血圧降下作用。三大美人泉質の1つ(仕上げ系:肌のハリ・弾力)。カルシウム型は鎮静、ナトリウム型(芒硝泉)は脳卒中、マグネシウム型(正苦味泉)は動脈硬化に。飲用で胆汁分泌促進・便秘解消

浴用適応症

きりきず、末梢循環障害、冷え性、うつ状態、皮膚乾燥症

飲用適応症

胆道系機能障害、高コレステロール血症、便秘

代表温泉地

山中・伊香保・四万・玉造・天童・金田一・法師 ほか

二酸化炭素泉

タイプ5 =ぬる湯のシャンパン/別名「ラムネ湯」「心臓の湯」

湯に入ると体に細かい泡がびっしりつく。気泡が皮膚から吸収され血管を拡張、低い湯温でも血流を良くし血圧を下げる。日本では稀少。34〜37℃のぬる湯で長湯が基本。湯に溶けにくいガスのため、加温・湧出元から距離があると効果が落ちる。

浴用適応症

きりきず、末梢循環障害、冷え性、自律神経不安定症

飲用適応症

胃腸機能低下

代表温泉地

長湯・湯屋・泡の湯・大塩・大丸・吉川 ほか

含鉄泉

タイプ6 =赤錆色/別名「婦人の湯」「子宝の湯」「濁り湯」

空気に触れると鉄が酸化して赤褐色(鉄錆色)に。湧出直後は無色透明。月経障害・更年期障害・冷え性に。飲用で鉄分補給 → 鉄欠乏性貧血に。

浴用適応症

なし(一般適応症のみ。月経障害は旧基準で記載)

飲用適応症

鉄欠乏性貧血

代表温泉地

有馬・伊香保・長湯・小坂・滝の湯・有明 ほか

硫黄泉

タイプ7 =玉子臭/別名「心臓の湯」「美肌の湯」「痰の湯」

温泉らしい独特の硫化水素臭。色は乳白色〜エメラルドグリーン。皮膚病・慢性婦人病・糖尿病に効くが刺激が強く、湯あたりしやすい。心臓・血管に作用するため高血圧にも。金属を腐食させるので時計や指輪は外す。

浴用適応症

アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬、慢性湿疹(糖尿病)、表皮化膿症

飲用適応症

糖尿病、高コレステロール血症

代表温泉地

登別・万座・月岡・草津・野沢・蔵王・酸ヶ湯 ほか

酸性泉

タイプ8 =肌ピリピリ/別名「皮膚病の湯」

pH が低い(酸性度が高い)。強い殺菌力で水虫・皮膚病に効く。肌がピリピリし、敏感肌・高齢者・乾燥肌の人には不向き。湯上がりは真水でかけ湯を。

浴用適応症

アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬、糖尿病性湿疹、表皮化膿症

飲用適応症

慢性消化器病、便秘

代表温泉地

草津・玉川・蔵王・須川・嶽・酸ヶ湯・川湯・万座 ほか

放射能泉

タイプ9 =ラドン泉/「痛風の湯」

ラドン(気体)を含む。「ホルミシス効果」と呼ばれる微量放射線による免疫活性が言われる。ラドンは半減期3.82日と非常に短いため、湧き出した温泉でしか効果を得られない稀少な泉質。痛風・関節リウマチ・強直性脊椎炎に。

浴用適応症

高尿酸血症(痛風)、関節リウマチ、強直性脊椎炎など

飲用適応症

なし

代表温泉地

三朝・有馬・増富・村杉・池田・恵那ラジウム ほか

含よう素泉

タイプ10 =平成26年改正で新設/うがい薬の主成分

よう素は甲状腺ホルモンの主原料で、新陳代謝を促進。コレステロールを下げる作用も。甲状腺機能亢進症の人は禁忌。色は黄色〜茶色、長期保存で褐色化(「経年変化」する珍しい泉質)。

浴用適応症

なし

飲用適応症

高コレステロール血症

代表温泉地

新津・大沢・白子・有明天空・両神 ほか

CHAPTER 4

効能マトリクス

平成26年(2014年)7月1日改定の泉質別適応症 早見表。「自分の症状はどの泉質に効くか」を逆引きできます。
全泉質に共通する 「一般的適応症」 もあります(疲労回復、健康増進、自律神経不安定症、不眠症、うつ状態など)。

浴用の泉質別適応症

適応症 単純 塩化物 炭酸水素 硫酸塩 CO₂ 含鉄 硫黄 酸性 放射能
きりきず
末梢循環障害
冷え性
皮膚乾燥症
うつ状態
自律神経不安定症
不眠症
アトピー性皮膚炎
尋常性乾癬
表皮化膿症
慢性湿疹(糖尿病)
高尿酸血症(痛風)
関節リウマチ
強直性脊椎炎

飲用の泉質別適応症

適応症 単純 塩化物 炭酸水素 硫酸塩 CO₂ 含鉄 硫黄 酸性 よう素
慢性消化器病
便秘
胃十二指腸潰瘍
逆流性食道炎
糖尿病
高コレステロール血症
胆道系機能障害
胃腸機能低下
鉄欠乏性貧血

※ 飲用は保健所からの飲用許可がある温泉でのみ可能。許可がない場合は飲まないこと。

CHAPTER 5

美人の湯 3条件

「美人の湯」は俗称で、明確な基準はないが、教本では 3つの効果系統 として整理されています。役割の違う3つを 湯巡りで組み合わせる のが理想。

クレンジング系

古い角質を落とす

炭酸水素塩泉 または pH 7.5以上の弱アルカリ性〜アルカリ性単純温泉。重曹分・アルカリが角質を分解 → ツルツル。

※ 落とし穴:保湿剤や塩化物泉を後で「仕上げ」に入らないと乾燥する

保湿系

水分を肌に閉じ込める

塩化物泉。塩のコーティング効果で水分蒸発を防ぐ。湯上がりタオルで強く拭かない。

クレンジング後の「仕上げ湯」として最強

仕上げ系

肌のハリ・弾力

硫酸塩泉。肌を引き締めるアンチエイジング効果。

「ハリ」「弾力」を感じたいときに

湯巡りの順番:強い湯(酸性・硫黄など刺激強い)→ 単純温泉や塩化物泉で仕上げ、が基本。最後に強い湯に入ると肌に残った成分で荒れることがある。

CHAPTER 6

温泉分析書の読み方

各温泉施設の脱衣所に必ず掲示されている「温泉分析書」。次の10ポイントを順に確認すれば、その温泉の正体がほぼわかります。

  1. 01

    泉質名 と 4軸タグ

    「ナトリウム-塩化物泉(低張性・中性・高温泉)」のように、最初の1行に 泉質+浸透圧+液性+泉温 が並ぶ。ここで温泉の人格が決まる。

  2. 02

    泉温(25℃以上か)

    源泉温度。25℃未満なら冷鉱泉で加温前提=循環濾過の可能性が高い。42℃を超えていれば「加水・加温なしで入れる」プレミアム源泉。

  3. 03

    湧出量(鮮度の指標)

    「100リットル/分」が 1日100名分 の入浴を新鮮に提供できる目安。少ないと循環、多いと「源泉かけ流し」が可能。

  4. 04

    pH(美肌指標)

    pH 7.5 以上 → 美肌効果あり。10を超えるとキュッキュッ感。pH 3未満は強酸性で殺菌力◎だが肌刺激も強い。

  5. 05

    浸透圧(高張性なら)

    高張性は短時間でも 湯あたりしやすい。長湯禁物。低張性は逆に長く入れる。

  6. 06

    溶存物質(ガス性除く)

    1,000 mg/kg 未満 → 単純温泉、以上 → 塩類泉。10g/kg以上なら高張性で濃い。125〜250mg/kg程度なら塩素泉として薄めの「優しい」湯。

  7. 07

    陽イオン・陰イオンの主役

    20 mval% 以上の成分が泉質名に入る。Na⁺多めなら「保湿・しっとり」、Ca²⁺多めなら「鎮静」、Mg²⁺多めなら「動脈硬化予防」、HCO₃⁻多めなら「ヌルヌル」。

  8. 08

    特殊成分(鉄・硫黄・ラドン・ヨウ素・CO₂)

    これらが規定値を超えると 「含○○-××泉」 と泉質名に追加される。鉄(II)が10mg/kg以上で含鉄、総硫黄2mg以上で硫黄泉、CO₂が1,000mg以上で二酸化炭素泉。

  9. 09

    適応症と禁忌症の掲示

    浴用・飲用 それぞれの 「一般的適応症」「泉質別適応症」 と、「一般的禁忌症」「泉質別禁忌症」 が並ぶ。妊娠中(特に初期と末期)は2014年改正で禁忌から除外。

  10. 10

    「加水・加温・循環・入浴剤・消毒」掲示の有無

    この5項目は掲示義務。「加水あり」+「加温あり」を同時に行っているなら、温泉の供給量が不足している=かなりの加水で「水増し」の可能性。

もっと深く読みたい人向け:応用チェックリスト18項目
  • 11. ナトリウム/カルシウム/マグネシウムのバランス
  • 12. ナトリウム/HCO₃ 80%以上 → 美肌の目安
  • 13. 炭酸水素イオン絶対量(美肌系の強さ)
  • 14. 陽陰イオンの「mvalの合計」
  • 15. 遊離二酸化炭素 400mg/kg 以上の濃さ
  • 16. ラドン含有量 → 50マッヘ以上は強放射能
  • 17. CO₂・放射能・酸性が泉温で変質しないか
  • 18. 鉄(II)・鉄(III) のどちらが多いか
  • 19. 含鉄泉の色(鉄の量と色の関係)
  • 20. 水素イオン 1mg/kg 以上で酸性扱い
  • 21. 遊離硫化水素(H₂S)の濃さ
  • 22. 硫化水素イオン(HS⁻)の濃さ
  • 23. 臭素・よう化物イオン(よう素泉判定)
  • 24. 泉質名に反映されない CO₂ 量
  • 25. 水酸(OH⁻)量(強アルカリ判定)
  • 26. 総硫黄量
  • 27. メタケイ酸 50mg/kg 以上で美肌系
  • 28. 「ミリバル」表記が無い場合は計算で出す

CHAPTER 7

実例で読んでみる

実際の温泉分析書を一緒に読み解きます。下の見本に 17 の番号タグを打ったので、第6章の10ポイントと照合しながら追ってください。
最後に「この温泉は何者か?」を3行でまとめます。

温泉分析書(見本) 厚生労働省様式

温 泉 分 析 書 (見本)

  1. 1. 分析申請者

    住所 ○○県○○市○○町○○番地
    氏名 ○山○男
  2. 2. 源泉名及び湧出地

    源泉名 ○○温泉○号泉
    湧出地 ○○県○○市○○町○○番地
  3. 3. 湧出地における調査及び試験成績

    (イ)調査及び試験者 ○○○○研究所試験センター ○川○郎
    (ロ)調査及び試験年月日 ○○年○○月○○日
    (ハ)泉温 42.7℃1(気温13℃)
    (ニ)湧出量 84 L/分2(自然湧出・掘削・自噴・動力揚湯)
    (ホ)知覚的試験 無色澄明無味無臭
    (ヘ)pH値 8.23(ガラス電極法)
    (ト)ラドン(Rn) 
  4. 4. 試験室における試験成績

    (イ)試験者 ○○○○研究所試験センター ○川○郎
    (ロ)分析終了年月日 ○○年○○月○○日
    (ハ)知覚的試験 無色澄明無味無臭
    (ニ)密度 0.9994 g/cm³(20℃/4℃)
    (ホ)pH値 8.51(ガラス電極法)
    (ヘ)蒸発残留物 1.32 g/kg(110℃)
  5. 5. 試料1kg中の成分・分量及び組成

    (イ)陽イオン4

    成分mgmvalmval%
    ナトリウムイオン (Na⁺)95.54.1522.88
    カリウムイオン (K⁺)3.420.090.48
    マグネシウムイオン (Mg²⁺)0.200.020.09
    カルシウムイオン (Ca²⁺)27813.9076.55
    鉄(II)イオン (Fe²⁺)<0.010.000.00
    マンガンイオン (Mn²⁺)0.100.000.00
    アルミニウムイオン (Al³⁺)<0.050.000.00
    陽イオン計37718.2100

    (ロ)陰イオン5

    成分mgmvalmval%
    ふっ化物イオン (F⁻)0.70.040.21
    塩化物イオン (Cl⁻)1133.1917.67
    硫酸イオン (SO₄²⁻)69914.680.74
    炭酸水素イオン (HCO₃⁻)15.30.251.38
    陰イオン計82818.1100

    (ハ)遊離成分

    非解離成分

    メタケイ酸 (H₂SiO₃)40.1 mg
    メタホウ酸 (HBO₂)5.1 mg
    非解離成分計45.2 mg

    溶存ガス成分

    遊離二酸化炭素 (CO₂)0.0 mg
    遊離硫化水素 (H₂S)0.0 mg
    溶存ガス成分計0.0 mg

    溶存物質計(ガス性のものを除く) 1.25 g/kg6

    成分総計 1.25 g/kg

    (ニ)その他の微量成分(mg)

    総ひ素 0.13 / 銅イオン 検出せず(0.002未満)/ 鉛イオン 検出せず(0.005未満)/ 総水銀 検出せず(0.0005未満)
  6. 6. 泉質

    カルシウム・ナトリウム−硫酸塩温泉7
    (弱アルカリ性・低張性・高温泉)
  7. 7. 禁忌症、適応症等は別表による。

○○年○○月○○日 登録番号 ○○○第○号
○○○○研究所試験センター 所長 ○川○康

読み解きガイド

1

泉温 42.7℃

42℃以上 → 高温泉。加水・加温なしで入れる「源泉そのまま」レベル。

2

湧出量 84 L/分

100 L/分の鮮度目安にやや届かず。1日約84名分の入浴を新鮮提供。自然湧出のため動力揚湯ではなく、酸化等の劣化が少ない。

3

pH 8.2

pH 7.5以上8.5未満 → 弱アルカリ性美肌効果ありのレンジ。試験室再測定で8.51と微妙にアルカリ性寄り(湧出から少し中和進行)。

4

陽イオンの主役

Ca²⁺ が 76.55%Na⁺ が 22.88%
いずれも 20 mval% を超える ため、両方とも泉質名に入る。多い順に「カルシウム・ナトリウム」と並べる。

5

陰イオンの主役

SO₄²⁻ が 80.74% で圧倒的。20 mval% を超えるのは硫酸イオンのみ。
→ 陰イオンは 「硫酸塩」 1つで決まり。

6

溶存物質 1.25 g/kg

1,250 mg/kg → 1,000 を超えるので 塩類泉カテゴリー(単純温泉ではない)。
ただし 8 g/kg 未満なので浸透圧は 低張性。長湯OK、湯あたりしにくい。

7

泉質名の組み立て

陽イオン(Ca・Na) + ハイフン + 陰イオン(硫酸塩) +「温泉」
カルシウム・ナトリウム−硫酸塩温泉
4軸タグで括弧書き → (弱アルカリ性・低張性・高温泉)

CONCLUSION

この温泉は何者か?

カルシウム・ナトリウム−硫酸塩温泉(弱アルカリ性・低張性・高温泉)
「肌を仕上げる、優しめの高温湯」

◯ 浴用適応症

きりきず、末梢循環障害、冷え性、うつ状態、皮膚乾燥症

+ 一般的適応症(疲労回復・健康増進・睡眠改善 など)

◯ 飲用適応症

胆道系機能障害、高コレステロール血症、便秘

※ 飲用は施設の許可を確認

⚠ 注意

一般的禁忌のみ(特異な禁忌は少ない)。下痢時は飲用を避ける。

3行まとめ

  • 硫酸塩泉なので「美人の湯・仕上げ系」(肌のハリ・弾力 / アンチエイジング)
  • pH 8.2 + 弱アルカリ性 でクレンジング効果も微弱に併発 → 湯上がりは保湿推奨
  • 低張性 × 高温泉 なので「短時間で温まり、長湯にも耐える」万能型。うつ状態・冷え性・きりきずに最適
この導出を10ポイントで再確認する
  1. 泉温:42.7℃ → 高温泉 ✓
  2. 湧出量:84 L/分(自然湧出)→ 鮮度◯
  3. pH:8.2 → 弱アルカリ性、美肌効果のレンジ
  4. 溶存物質:1,250 mg/kg → 塩類泉、低張性
  5. 陽イオン主役:Ca 76.55% + Na 22.88%(共に20%超)
  6. 陰イオン主役:SO₄ 80.74%(単独)
  7. 特殊成分:鉄・硫黄・CO₂・ラドン・ヨウ素いずれも基準未満 → 「含○○」なし
  8. 泉質名組立:カルシウム・ナトリウム−硫酸塩温泉
  9. 4軸タグ:弱アルカリ性・低張性・高温泉
  10. 美人の湯適性:硫酸塩(仕上げ系)+ pH 8.2(クレンジング軽め)

CHAPTER 8

正しい入浴法

効能を引き出すには入り方も大事。「どう入るか」が「どこに入るか」と同じくらい結果を変えます。

1 かけ湯(足元から段階的に)

必ず心臓から遠い足元からかけ湯。3〜5回かけて体を慣らしてから入る。心臓発作・脳卒中の予防。

2 水分補給

入浴前後に コップ1〜2杯の水・お湯を。脱水と血液濃縮を防ぐ。アルコールは厳禁。

3 温度と時間

42℃以上の全身浴は10分以内。リラックス目的なら37〜40℃のぬる湯で長湯(副交感神経優位)。CO₂泉は34〜37℃。

4 分割浴

10分1回より、3分浴 → 休憩 → 3分浴 → 休憩 → 3分浴 で同じ消費カロリーで体への負担を半減できる。

5 湯上がりの「すすぎ」

刺激の強い湯(酸性・硫黄)の後は 真水でかけ湯。逆に保湿系(塩化物・硫酸塩)は すすがず、タオルで軽く押さえるだけ。

6 温泉療養(連泊)

短期で効果を出すなら2〜3週間の連湯を1日2〜3回。1〜2日では発汗の程度。湯あたりが出たら1日休む。

10分1回入浴の消費カロリー目安:40℃ 約40 kcal / 「ややきつい」ウォーキング 約109 kcal / ジョギング 約80 kcal / ご飯1杯 約160 kcal。湯と運動は組み合わせよう。

CHAPTER 9

禁忌症と注意

浴用の一般的禁忌症(全泉質共通)

  • ・病気の活動期(特に発熱)
  • ・活動性の結核
  • ・進行した悪性腫瘍/高度の貧血
  • ・重い心臓・肺・腎臓病
  • ・消化管出血、目に見えない急性内臓疾患
  • ・呼吸不全・腎不全
  • ・出血性疾患
  • ・高度の脱水
  • ・その他、急性疾患(特に発熱を伴うもの)

※ 妊娠中(特に初期と末期)は 2014年改正で禁忌から除外

飲用の一般的禁忌症

  • ・腎臓病、高血圧、その他むくみのある病気
  • ・甲状腺機能亢進症(よう素泉)
  • ・下痢のとき
  • ・1日の飲泉量は 200〜1,000 mL 以内

泉質別 主な禁忌

  • 塩化物泉(飲用):腎不全、心不全、高血圧、虚血性心疾患
  • 炭酸水素塩泉(飲用):カリウム制限が必要な腎不全、副甲状腺機能低下症
  • 硫酸塩泉(飲用):下痢のとき
  • 含鉄泉(飲用):甲状腺機能亢進症
  • 酸性泉・硫黄泉:皮膚・粘膜が敏感な人、高齢者の乾燥肌

体感トラブルと対処

  • 湯あたり:3〜10日目に出る発熱・頭痛。1日入浴を休む
  • 湯ただれ:刺激の強い湯で皮膚炎。真水ですすぐ
  • 湯疲れ:長湯・高温で疲労感。分割浴に切替
  • のぼせ・めまい:すぐに横になる。水分補給

CHAPTER 10

用語ミニ辞典

分析書や温泉紹介でよく出てくる用語をまとめて。覚えておくと旅館の説明文がスラスラ読めます。

適応症
温泉が効くとされる症状の科学的(医学的)な見立て。療養泉のみが掲示できる。
禁忌症
入ってはいけない・飲んではいけない病態。命に関わる。
かけ流し
湧出した源泉をそのまま浴槽に入れて、溢れた湯を捨てる方式。鮮度が高い。
循環濾過
浴槽の湯を濾過して再利用。湧出量が少ない・温度が低い場合に必要。塩素消毒を伴うことが多い。
源泉かけ流し
湧出温度のまま、加水・加温・循環・入浴剤なしで提供。条件が揃わないと不可能。
湧出量
1分あたり何リットル湧くか。100L/分で1日100名分の入浴を新鮮に提供できる目安。
mval(ミリバル)
「電荷の濃さ」の単位。陽陰イオンを比較するときに使う。20 mval% 以上の成分が泉質名に入る。
マッヘ(ME)
放射能泉の含有量単位。ラドン1マッヘ = 13.4 ベクレル。
湯花(湯華)
温泉成分が結晶化したもの。硫黄泉・炭酸水素塩泉でよく見られる。
温泉法
昭和23年制定の法律。温泉の定義・採掘・利用許可を規定。
ホルミシス効果
微量放射線が免疫を活性化するとされる説。放射能泉の効能の根拠。
交感神経 / 副交感神経
42℃以上の熱い湯は交感神経(覚醒)、37〜40℃のぬる湯は副交感神経(リラックス)を優位にする。